FC2ブログ
Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
顔のない関係【07】
 化粧品が手に入り、その気になればメイクを始められたのかもしれない。けれど、「男」の顔に「女のメイク」をしても、自分を「女」にする気分を昂ぶらせることは無理だっただろう。

 無意味な落胆を避けるために、どうしても「ウイッグ」が必要だった。

 ちょうどエクステンションが流行っている時期だったから、デパートの「ヤング・レディス」のフロアに行けば、様々な種類のウイッグを簡単に見つけることができた。

 問題は、どうやってそれを手に入れるか、だった。
[顔のない関係【07】]の続きを読む
スポンサーサイト
[PR]

誰の目にも見えない顔【02】
 「コドモ」の間にSMに魅せられた人は例外なく、自分の性的衝動を満たす「素材」を手にすることの難しさに嘆いたことがあるだろう。

 無意識に手に取ることができるマンガ雑誌には、ただただ扇情的なだけの興味本位のSM描写が入り混んでいる。フィルタリングソフトを導入していないPCを触ることができる「幸運な」環境を手に入れさえすれば、いまどきのコドモは、たやすくSMの世界へ足を踏み入れられるに違いない。

 大人になった私は、「コドモ」世界のあり方にいろいろ言いたくなる。
[誰の目にも見えない顔【02】]の続きを読む
誰の目にも見えない顔【01】
マンガ雑誌のSM描写にコメントを頂き、その言葉に触発され、少し現実世界に近い部分から、「大人になっていない人」を「コドモ」と表現して、自分を展開してみたいと思う。

[誰の目にも見えない顔【01】]の続きを読む
顔のない関係【06】
 ファンデーション、口紅、マスカラ、ブラジャー、ショーツ、パンティストッキング、ウイッグ、そうして、女性ものの洋服。

初めて自分を「女」にした瞬間に至るまでの数日間を、今でも忘れたことはない。

 心の中で自制していた一線を越える「瞬間」は、まさに一瞬でしかない。

 「その場の勢い」で一線を越えてしまうこともあれば、境界線のほんの少し手前を乗り越えるのに、気の遠くなるような時間がかかる時もある。

 私の場合は、そのちょうど中間だったように思う。

 憧れていた期間は、本当は割に長い期間だったかもしれない。初めて蘭 光生の作品を手にした時から数えれば、既に5年以上が経過していたのだから。
 
[顔のない関係【06】]の続きを読む
マンガ雑誌のSM描写
 本心から言えば、「かき立てられないモノ」なのかもしれない。

 ここ数年で、「少年○○」とか「ヤング○○」のようなマンガ雑誌の中に、SM「的」な描写をしたシーンがとても多く見られるようになった。
 胸とお尻が異常に大きく、目が大きく子供のような顔をした、簡単に言えば「マンガっぽい」女性が縛られて裸にされているような描写が、毎週のように掲載されているのを目にする。

 いい年になりながら、コンビニでマンガ雑誌を立ち読みしている私もどうかしているけれど、今や、18禁でもなんでもない普通のマンガ雑誌の中にSM描写が入り込んでいるので、たまたまそうしたページを開いてしまった瞬間、じっくり眺めたい、と思う気持ちを押し殺して読み飛ばさないとならない状況に陥る。
[マンガ雑誌のSM描写]の続きを読む
妄想を展開する【15】
 「ありがとう・・・、もう・・・大丈夫だから、手を止めていいから・・・」

 胸元の前に両手を合わせ、肘の辺りで両胸を押さえ、知加子が私の腕の中で苦しんでいる姿は、いつもオフィスで私の目の前を横切る時の彼女と同じだった。

 しかし、知加子の表情には、苦悶の痕がまだ消えずに現れている。二の腕全体から伝わる痛がゆさと、擦過熱が続いているのか、時折深く息を詰まらせ、数秒後に呟くように低く息を吐く姿を、私は無言で眺めるしか無かった。

 「済みません・・・、済みません・・・」

 どうすることも出来ず、いたたまれずに謝罪の言葉を並べてみるが、私の言葉に答える余裕が、知加子にあるはずも無かった。
[妄想を展開する【15】]の続きを読む
顔のない関係【05】
 【デジタルカメラからWebcamへ】

 静止した瞬間を切り取ることと、連続した時間そのものを伝えることとの間には、大きな隔たりがある。その境界線を越えようとした歴史が、例えば雑誌の付録についた「ソノシート」レコードであり、CD-ROMであり、DVDやテレビ番組連動のスペシャルWebサイトなのだろう。

 1枚の写真、数行の記事だけで伝えきれなかった動きや、描写しきれなかった空気感を伝えようとする思いを私も確かに持っていたから、伝わらないものを伝えようとする焦りと望みが、その裏に隠れていることが分かる。

 「放送とネットの融合」というのは少し前のハヤリコトバだったけれど、葉書や、せいぜいFAXやメールで繋がっていた関係性が、ネットワーク越しにリアルタイムな繋がりに変化した瞬間の感覚を自分の脳裏に焼き付けた人は、実はそう多くないのではないだろうか。

 融合とは、あるいは境界線を越えることの連続、なのかもしれない。

[顔のない関係【05】]の続きを読む
顔のない関係【04】
 Webcamを手にする直前、私は帰宅して一人で過ごす時間のほとんどを、Netmeetingの世界で過ごすようになっていた。

 フランクフルトソーセージ、スキン、ベビーローション、洗濯ばさみ、ローター、そしてデジタルカメラ。妄想をかきたてる道具をいくつか準備すると、すぐに回線を繋ぎ、コンタクトサーバーに接続してずっと待機し続けた。

 早く帰宅出来た日は、21時過ぎから繋げることもあった。23時までは1~2時間あったけれど、1時間の通話料金は200円。数年前のダイヤルQ2を思えば比べものにならないくらい安く思えた。

 その頃私がPCを置いていた部屋にはテレビが無かったから、私はちょうどこの頃流行っていたテレビ番組を見た記憶がない。

 私は、完全にNetmeetingの世界にはまりこんでいた。
[顔のない関係【04】]の続きを読む
顔のない関係【03】
 「S女性の方、お待ちしています」

 コンタクトリストに掲載する「待ち受けコメント」として、最終的に選んだのは、何のひねりもない言葉だった。

 まずは話しの輪の中に入り、その中で相手になりそうな女性を見つけ、さらに自分の嗜好をアピールして・・・という段階を踏んでいくWebChatに比べ、Netmeetingはより直接的に自分の好みをアピールして待機することができた。

 極端に言えば「針責め・食糞に興味があります」などと書けば、そのことを嫌う人が入ってくるはずがない。ターゲットを絞れば絞っただけ、望みに近い人に会えるような幻想を、コンタクトリストの無数に並んだ名前がもたらしていた。

 「拘束・苦痛系の責めを好むS女性の方」

そんなコメントも良く使っていたように思う。いずれにしても、まだ、M男性の数は、ネットの中にそう多くは無かったから、目立ったことは確かだ。
[顔のない関係【03】]の続きを読む
身体に残る感触
 「触る」「入れる」「舐める」

 「触られる」「受け入れる」「舐められる」

 一般的に、前者は男性の役割で、後者は女性の役割に見える。それならば、「触れた感触」と「触れられた感触」は、どちらが深く身体に刻まれるのだろうか。
[身体に残る感触]の続きを読む
顔のない関係【02】
 IRCクライアントソフト、そしてICQ。

 簡単な設定でリアルタイムにメッセージをやりとりできるソフトウェアが、急激に拡がりを見せ始めていた。

 少しアンテナが鋭い人々は、次々にバージョンアップするこれらのソフトウェアをすぐにダウンロードして自分のPCに常駐させ、やっと始まった「テレホーダイ」サービスを駆使しながら、友人同士や遠距離の恋人との連絡に使い始めた。

 23時から翌朝まで続く、つかの間の疑似・常時接続環境。

 インターネット=電話回線、だった時代、独占企業の保守政策によって課せられたこの制約は、「自由なネットコミュニケーション」の発達を阻害した、と今では評されている。

 確かに、電話料金を節約するため、インターネットへの接続を毎日23時過ぎに集中させる人々が増えていた。長時間ネットに接続することで得る「何か」を強く求める人ほど、その傾向は強く、チャットで出会う人々とも、「同じ生活時間を共有している」意識が醸成されていたように思う。

 一種異様なほどの性衝動を、集中して受け止め始めていた場所が、Netmeetingのコンタクトサーバである。
[顔のない関係【02】]の続きを読む
顔のない関係【01】
 「仮面舞踏会」が無くなってから、私は自分の心の中のM衝動の行き場を探すため、またSMチャットルームのあるサイトを探すようになった。

 チャットのCGIスクリプトを自分のホームページスペースで動かすこと自体は既に難しいことではなく、それを許すプロバイダと契約している人であれば割にたやすく「場」としてのチャットルームを提供することはできるようになっていた。

 日に日にそうしたサイトが増えつつあったように思う。そのいくつかに入室してみた。

 「仮面舞踏会」では常連として、人となりを理解されていた私も、初めて入室する部屋では当然、誰にも知られていない一人のM男性でしかない。

 ネット上に「S男性」は多く「S女性」は極端に少ない。

 一見の、しかもM男性が、参加自由なオープンチャットでできることはほとんど無かった。望む相手であるS女性がその場にいることなど、滅多に無い。「見学」と称する男性たちは、時折M女性が入室した瞬間、「S男性」に名前を変えて殺到する。

 繰り広げられるM女争奪戦の邪魔をしないよう、私は自分がMであるという記号のみを示すためだけに何時間も待機し続けた。

 何も、得ることはできなかった。
[顔のない関係【01】]の続きを読む
「仮面舞踏会」【06】
 「専属奴隷」という誇らしい名前を生まれて初めて手に入れた日から数ヶ月後、私は、その名前の意味を失った。

 お互いの嗜好の不一致、もしくは、むしろ私の不始末がその結果を導いたのであれば、私はその後、これほど長く放浪しなかったのかもしれない。
 あるいは、「プロの調教技術」を持つ彼女の専属奴隷として、一度でもその技術の前に自分の身体を晒すことができたなら、私が何を求め、どうしてMの性癖を持つのか、果たして自分は本当にMと言えるのかを、知ることができたのかもしれない。

 あまりにも時間は短すぎ、そして、チャンスは私の手のひらからこぼれ落ちていった。

 しばらくして私の元に届いたぬいぐるみだけが、彼女に抱かれた残り香を宿し、「専属奴隷」の称号が嘘でなかった証拠として今も私の部屋の書棚の上から私を見下ろしている。
[「仮面舞踏会」【06】]の続きを読む
copyright © 2005 Visions of Masochist all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.