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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
頭で達する絶頂【06】
 たまたまちょっとした状況が重なり、私はその時、かれこれ15年ぶりほどの「禁欲」状態にあった。

 どこまでを「禁欲」とするかは、そういったことを調教に取り入れられている方から見れば様々だと思うけれど、私にとっては、射精をしないで数日以上過ごしたことは「禁欲」と言うに十分だったと思う。
 一日中、何をしていても、ふとした瞬間に御主人様を想い出しては、こめかみの辺りが鈍くうずいた。

 通りを歩く女性に、御主人様の背格好に似た人を見かけては、御主人様をその姿にトレースして頭に描いた。

 たまたま身につけたコロンの香りの中に、御主人様の薫りの欠片を感じ、鞭を打った後上気した御主人様の胸元の薫りを想った。

 何度、ソファーでくつろぐ御主人様の足下に、全裸で正座して平伏する瞬間を想っただろう。

 今、まさにその瞬間が、私の目の前にある。

 性欲に完全に支配されていた私は、していただきたいことを思いつくまま全て、欲した。クリップを使われること、浣腸、そして、命じられた姿勢をキープさせられ、崩れるまで「躾」を受けること、そして、「聖水」を頂くこと・・・。

 グリセリンが腸管の中に引きずり出した体内の水分を、数十分の苦悶と共に失った私は、乾いた喉に一旦口に含んだ水を少しずつ流し込んでいただいた後、にっこりと笑みを浮かべた御主人様から本当は何が欲しいのか、もう一度、問われる。

 「御主人様のワイン」ではなく、「聖水が欲しい」とはっきり口に出来たのは、溜まりに溜まった性衝動のせいだったのだろうか。

 あれほど、「調教」「奴隷の挨拶」「聖水」「御主人様」・・・、そんな「いかにも」な言葉や、やたらにおどろおどろしい雰囲気に作り上げられたSMクラブのプレイルームに嫌悪感を抱いていたことを、私は次第に忘れていく。言葉や雰囲気から「SMにふさわしい状況」を作為的に整えた空間ではなく、御主人様を足下から仰ぎ見る姿勢を取るだけで、それが私の「リアル」な空間になるのだから。

 かつて、ツーショットダイヤルや、Netmeeting、チャットで出会った「S女性」に、何度も何度も「何ができるの?希望の責めは?経験は?」と問われ続けた。

 なんとか答えを絞りだし、その途端、通話が切れる音で、返事が気に入られなかったことを知った。

 次こそは気に入られようと、前回受け入れられなかった答えを修正しては、次の女性に返し続けた。

 あの時感じた違和感は、今になってみれば分析できる。私は、「SMプレイ」をしたかったわけではなく、「SMに魅せられた苦しみ」を分かち合いたかったのだ、と。

 鞭で人の身体を撲つ衝動を持った苦しみと、撲たれることを願う苦しみに、優劣も上下もない。いずれを持ったとしても、自分の衝動を叶えられない苦しさを抱えて生きるしかない。

 寂しさに負け、かりそめの快楽を得るために好きでもない相手と肌を重ねることも、苦しみに耐えかねて「希望の責め」をオーダーし、承諾してもらえる関係だけを求めることも、同じことだと私は思う。

 きっと、苦しんだはず。さぞ、苦しかったでしょう?

 だからもっと、自分で抑圧した規制の枠を取り去る姿が見たい。

 足下から仰ぎ見ながら、そんな想いを込めて視線を絡めて向き合う。「聖水」をいただくまで、あと少しの辛抱だった。

 ・・・その7へ続く。
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コメント
この記事へのコメント
苦しみを分かち合う
 いくら話しても分かってもらえない人がいます。
一生懸命理解しようと歩み寄ってくれる人がいます。
理解できなくとも慰めてくれる人もいます。
話を聞いて、共感してくれる人もいます。

でも、ああ、この人は
同じ苦しみを知っていると思った瞬間は
恋の淵を落ちていくときのうように
甘く、切なく、満ち足りているような気がします。
2006/09/13 (水) 14:06:23 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
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