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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
「女装M」×「男性S」【15】
 指定された「道具」は全て用意した。

 「男同士」でフロントを通り、数時間を過ごすことのできる場所を確保した。

 「会う」までに少なくとも数週間の時間を掛け、夜遅くまでSM談義を交わし、お互いの思うところを確認しあった。


 もう、これ以上、今の位置で立ち止まったままなすべきことは無かった。あとはホテルに電話して、仮予約を本予約に変更して、待ち合わせの時間だけを決めるだけで全てが現実になる。

 最後の一言を、どうしてもためらう。

 「あの・・・、一つだけお願いが・・・」

 「なんですか?」

 いつも通り、淡々とした口調(文字だけでしか判断できないけれど、それが淡々と落ち着いたものであることは十分にわかった)で、「彼」は私の質問を待つ。

 「あの・・・、・・・、あの・・・」

 「?」

 「・・・、私を、殺さないでください・・・」

 一番、恐れていたことを、最後に口にせずには居られなかった。携帯電話でもメッセージの交換ができるようになり、「ネットで会った男性との事件」は、次第に増えているように見え始めていた。

 どう転んだとしても、私の行動を支持する人など一人もいないはずだった。

 家族、職場、そして傷つけられた自分自身。

 仮に「何か」が起きてしまった瞬間、「私」が性衝動に負けて一時の暴走をしたことを糾弾するに違いない。どうしてそこまでしなければ自分の性衝動の隙間を埋められなかったのか、そのことすら、理解してくれる人はどこにもいないことは明らかだった。

 「何か」が起きてはならないと思った。
 起こしてはならない、と思った。

 その言葉が、何かを担保するわけでないことは、当然のことだ。しかし、そう聞かずにはいられなかった。

 「殺す訳がないでしょう。私も、貴方とのきっかけを、無にしたいと思っているとでも?」

 「はい・・・」

 どんな答えを期待していたのか。
 笑い飛ばすことか、それとも何か担保に値するものを出してもらうことなのか。

 (・・・、賭けてみよう・・・)

 数秒、考えた。

 私はネットからリアルへの境界と、性衝動における性別の境界線を、越えることを選んだ。

 「では・・・、明後日の朝、ホテルの部屋でお待ちしています・・・」

  Mの性癖を持つ「女」として、S男性に責めてもらうことを依頼する。あと、数十時間で、その瞬間が現実に訪れる。

 私は、今までで最大の不安と昂奮の中に、いた。
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