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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
ふたり 【11】

「う・・・ん・・・?」

 どれくらいの時間がたったのか、静かになった辺りの気配を探りながら、由梨は目を覚ました。

 もやがかかったような頭の中で、今自分がどうしているのかを必死に理解しようとする。

 肩甲骨の下と手首、足首と内股に鋭い痛みがある。緩慢な動きで、首を回し、ゆっくり辺りを見まわすと、男も美恵も姿を消していた。
 由梨の身体は、高い天井から滑車のついた鎖で、片手づつを吊られ、両足首を床にうめこまれたフックに固く結び付けられている。

 下半身が泥のように重い。一体、何時間責められ続けたのだろうか。

 さっき身につけていたスーツが無造作に足元に置かれ、下着しか身にまとっていない状態であることにやっと気がつく。

 臀部からはまだ鈍い痛みが走ってくる。厳しい鞭打ちからそれほど長くは時間がたっていないことを由梨は理解した。

(それにしても、暑い・・・)

 室温は、30度をゆうに超えているだろう。加えて、湿った空気が息苦しさを倍加させ、呼吸が早まる。心音がはっきりわかる。

(苦しい・・・ッ)

 湿気を含んだ熱風で、全身から汗を搾り取られるようだ。完全に磔にされた状態では、上腕が少し動くだけで、苦痛から逃げ出すことは不可能だった。

ギイイイ・・・と重いドアが開く音が聞こえ、固いヒールの足音が近づく。美恵だ。

「美恵さん」

「いやだ・・・由梨、なんてイヤらしいの??」

 下着こそかろうじてつけているものの、身体を紅潮させ、全身を余すところなく晒しているその姿は、美恵ですら驚くほどの淫靡さだった。

 由梨をここに捕らえてから2時間ほど、おそらく由梨はそのほとんどを気絶して過ごしたはずだが、この部屋の温度と湿気は、その間ずっと由梨を責め苛んだに違いない。

「さっきは苦しかったでしょう?もっとも、今もだろうけど・・・。この部屋で貴方はこれから、気が狂うほどの羞恥を味わうことになるの」

 美恵が現れたことで、由梨に安堵の表情が浮かんだのを美恵は見逃さなかった。

 (安らいではだめ・・・連続的に羞恥心・背徳心を壊すことが今回の目的なんだから・・・)

「女は、いろんな物事に対して恥ずかしいっていう気持ちを持つものなの。心細いような、誰かにすがりたいような、そんな気持を、貴方に心の底から感じてほしい。」

美恵は細い指先を、由梨の首筋に這わせながら続けた。

「全てを引き出してあげるからね。逃げ出したくなると思うけど、私の顔でも思い浮かべて耐えて。今回は、私は、しつこいからね。覚悟は決まってると思うけど・・。」

「わかった?」

最高の笑顔を由梨に見せながら、美恵は尋ねた。由梨は美恵の笑顔に疑いを持つことなどできない。

(美恵さんが喜んでくれる・・・私には美恵さんを求めることしかできないんだから、もっと喜んでほしい、私と出会ったことを幸せに思って欲しい。私・・・、私・・・)

(・・・美恵さんにお仕えしたいんです)

「はい。狂わせて・・・ください。」

 最後の言葉だけを声に出さずに呑み込み、別の言葉で向かい合った。

「そう。じゃぁ、がんばってね。大好きよ。由梨」

そう言い残すと、由梨を置いて美恵は出て行った。
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