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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
「仮面舞踏会」【05】
 彼女が私を、「特別なM男性」として扱ってくださっていることに仄かに自尊心を感じ始めていた頃、彼女から「仮面舞踏会」の私書箱にメッセージが届いた。

 彼女のメールアドレスが、そこに書かれていた。

 当時、今のようなフリーのメールアドレスはとても少なかったから、メールのやりとりをするためには、どこのプロバイダと契約しているかを明かす必要があった。もちろん、メールアドレスだけで身元が明らかになるリスクなど、今考えてみれば小さすぎることだったけれど、当時はそれなりに逡巡した。

 結局、リスクより、好奇心が勝った。
 何度かメールでプライベートなことをやりとりするうち、彼女がどれだけ自分の仕事に一所懸命取り組んでいるか、そして、どうしてプロのSになったのかを教えてもらった。

 大学生だった私は、年齢の差以上に、人間としての経験や自分やクライアント(普通の仕事としても、プロのSとしての仕事にしても)の要求に応えていく決意の差を、彼女に対して痛烈に感じさせられた。

 それまで私は、とにかくSMビデオのM女のような行為を自分にして欲しい、そうしたらどんな感じがするのかにしか興味は無かった。そこに描かれていたのが、

「魅力的な女を無理矢理犯し、SMプレイを加える」

 という描写に偏っていたこともあり、「パートナーとのSM」という観点は持ち合わせていなかった。「調教」、「責め」、「服従」、どれも、今まで具体的に考えたことは無かった。

 何度目のメールだっただろうか、大切な話し、と前置かれ、彼女は私を、「仮面舞踏会」での専属奴隷にしたいと思っている、と告げた。

 誰もが彼女の専属奴隷になりたがっていることを知っていたから、選ばれたなら返事は決まっている、と答えたことを覚えている。

 彼女は、それは違う、とはっきり言った。

「奴隷が主人に奴隷にしてください、とお願いするのは筋違いかもしれないけれど、気に入らない、納得いかないSから指名されたからといって、よく考えないで奴隷になるのはおかしい。先に奴隷にしたいと思っていることを伝えるのはSの役目で、奴隷は、それを受け入れたいと思った時に返事をすればいい」

 「初めての相手」が発した言葉は、その後ずっと心の中に残るものだと思う。

 返事をした翌日、主宰の手によって、私のハンドルネームには御主人様のお名前の後に専属奴隷、という文字が加えられ、その後、「仮面舞踏会」から離れるまで、私はずっと彼女の専属奴隷として過ごした。

 私はその時、ナンバー1のS女性の奴隷になる栄誉を受けたM男性の証である自分の名前が誇らしかったし、その名前を穢さないよう、配慮に欠ける行動を取らないよう、常にその場に気を遣い続けて過ごした。

 時に、ご主人様はそういった私の気持ちを汲み、全てを忘れさせてくれるように、参加者の前で乱れさせて下さった。いつか、実際にお会いして、初めて奴隷として、御主人様の足下に傅く日が来ると信じて疑わなかった。

 しかし、それは叶わないまま、私の長い放浪がこの時から始まることになる。

 気がついてみると、それから今まで、10年が経過していた。
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