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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
妄想を展開する【17】
 不安と緊張で、眠れずに長い夜を過ごすはずだった。

 朝の光が開け放したカーテンをあざ笑うかのように照らし、私はまた、全身を汗に濡らして目覚めた。鈍い頭痛はいくらか和らいでいたが、起きあがることを押しとどめさせるかのように体をこわばらせている。

 (眠って、しまったのか・・・)

 時計は7時を既に回っている。いつも自宅を出る時間までは、ほんの30分ほどしかなかった。

 (まさか永久に休むわけにもいかないだろうな・・・)

 無意識に、痛む頭を左右の手のひらでこめかみの辺りを何度か押しながら体を起こした。もやがかかったように気持ちが晴れないのに、外の光りは最近にないほど白く、輝くように見える。
 シャワーを浴び、冷蔵庫からミルクを取りだして口に含み、リビングのテレビのリモコンを手に取り、電源ボタンを押す。

 すぐに、このところ続いている事件の「続報」が流れてくる。自らを「御主人様」と呼ばせ、女性を理不尽に監禁して暴行していた男のニュース。流れはじめてもう1週間になるだろうか。今日が昨日でも、先週の今日でも全く変わりのないかのように、「変態性欲を抱く原因となった家庭環境と生い立ち」を探そうとしているらしい。

 (物事になんでも直接の原因があると思うなんて、コドモの発想そのものじゃないか)

 自嘲気味に独り言を呟く。

 いつ、自分があのように好奇の視線に晒されるのか、今となっては、知加子の心一つにゆだねられている。

 (あのとき、あと少しだけ、自分の欲望を抑えられたら、知加子の体を傷つけることなど無かったのに・・・)

 後悔と自責の念に駆られ、何度も、何度も、縄で締め付けられつづけて血流が止まった知加子の腕を見て我に帰った瞬間のことがフラッシュバックしていた。

 何度思い返しても、時間を戻すことなどできるはずも無かった。無情に時計は時を刻み続け、出社するにはぎりぎりの時間を指していた。




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